今回の講座では、実際にアイデアから世界観や設定を考えていきます。皆さんもこの記事を参考にして実際にアイデアから世界観・設定を考えてみましょう。
詳しい方針の内容は前回講座の記事を参考にして下さい。
今回使うアイデア
今回は物語の作り方講座3で考えたアイデアの一つ『あるスポーツで全国優勝した少年が中学で未経験の部活に入部する話』を使って前回講座のそれぞれの方針を使いつつ世界観・設定を実際に作っていきます。
- アイデア(ストーリー)を膨らませつつ、世界観や設定を作る(パターン1)
- アイデア(ストーリー)を元に世界観や設定を作る(パターン2)
- 現実や創作物をベースにする・一部変換して作る(パターン3)
- まず世界観や設定を作る(パターン4)
良いアイデアが無い人はこのアイデアで考えてもいいですが、自分のアイデアがある人はそちらで考えてみて下さい。
なお方針内容を毎回書くとクドいので、この記事ではパターン1~4という呼称を使って主に解説していきます。
全パターンそれぞれを解説してもいいのですが、長くなりすぎるのでまとめて紹介します。
なお今回のやり方はあくまで一例です。絶対的な正解ではありません。
まずはもう少しアイデアを膨らませる作業から
『あるスポーツで全国優勝した少年が中学で未経験の部活に入部する話』だと少し情報が曖昧過ぎます。
そのため、パターン1~3のやり方の場合は、もう少しアイデアを膨らませてから世界観や設定を考えた方がやりやすいです。
アイデアを膨らませる作業は、講座3でもやりましたが、余裕がある人は復習がてらもう一度やってみて下さい。
まずはあるスポーツと未経験の部活を何にするかを考えます
もし片方が決まっている場合は、物語の方針に従って適切なスポーツや部活を設定するといいでしょう。すぐ活躍させるなら応用が利きやすい部活。戸惑う展開なら共通点が少ない部活がいいですね。
今回は、応用が利きやすい展開にしたいと思うので、サッカーで全国優勝した少年が中学で陸上部(長距離)に入部することにします。
あとは何故、未経験の部活に入部したかも決めておくと話の展開が楽になります。人物設定が決まっていない場合は、ここの理由次第で多少主人公の性格や心情が決まってきます。
例えば、一つの道を極めたから新たな道を目指す。なら前向きな性格。優勝したがそれはライバルに譲られた優勝だった。それで嫌になって未経験の部活に入った。ならプライドが高かったり嫌な物から逃げる性格。といった感じですね。
今回はある理由からサッカーを諦めざるを得なくなり、走ることが好きなこともあって陸上部に入ったことにします。
膨らませたアイデアをより具体化してまとめる
- サッカーで全国優勝した少年が中学で陸上部(長距離)に入部
- ある理由からサッカーを諦めざるを得なくなり、走ることが好きなこともあって陸上部に入った
これを纏めてさらに具体化します。
小学生の時、サッカーで全国優勝した少年。中学もサッカーを続ける予定だったが、事故で目に障害を負ってしまう。失明までには至らなかったが、疲労が溜まると物が二重に見えるなどサッカーを続けるには厳しい状況に陥った。悩んだ末に少年は走ることが好きだったこともあり、中学では陸上部に入る事を決意する。最初は短距離で伸び悩んでいたが、顧問の勧めで長距離に転向したところその才能が一気に開花する。
こんな感じでしょうか。
お前ソレどっから出てきた的な内容もありますね。
一応説明しておくと、目に障害を負わせたのは転向させる理由付けのためです。サッカー以外のスポーツなら肩を壊すのが無難かなと思います。もしくは、一時的に足に障害を負ってというパターンでもいいでしょう。
最後の部分はとりあえずこういう物語で進めようかなっていう指針ですね。サッカーなら長距離適正の方があると思って長距離にしました。馬力が要求されるスポーツ出身なら短距離とかフィールド競技辺りが応用が利きやすいと思います。
アイデアを元に世界観や設定を考える
そういうわけで、実際にサッカーアイデアで世界観や設定を考えていきます。
現実レベルを決める
まずは、何よりも現実レベルを決めます。現実レベルとはどの程度現実に準拠した世界かの度合いです。
これはどのパータンでも最初にやっておくことをオススメします。理由はセーフとアウトの基準を決めておかないと、後から世界観がブレッブレになるからですね。世界観とか設定なんて面倒くさいやってられるか! って言う人もここだけはある程度決めておいて下さい。
今回のアイデアの場合、不思議な力いわゆる魔法とか能力を出すとほぼ確実に読者が戸惑います。
逸脱するとしても現実路線なら『アイシールド21』や『弱虫ペダル』ぐらいが限度でしょうか。『テニスの王子様』まで行くと完全に能力バトルになってしまうので、そこまで行くとちょっとやり過ぎですね。目の障害が障害では無くなってしまう世界観になります。
表現的にもっと現実寄りにするなら『スラムダンク』や『MAJOR』辺りがベストでしょう。
この辺りは作者の匙加減とか感性の問題的な部分もあるので、ある程度好きにして下さいとしか言えませんが、やり過ぎには注意しましょう。
私の場合は、基本『MAJOR』くらいで、時折『弱虫ペダル』…くらいまではアリ。程度の現実レベルにすると思います。
失敗例
現実レベルの設定で失敗した作品で有名なのは『名探偵コナン』
多くの人は気にしてないでしょうし、私も普段はまったく気にしませんが、完全に現実レベルが滅茶苦茶になっている作品です。
同作者の『まじっく快斗』と一部世界観を共有しているところがあるので、それを考慮すると問題ないのかもしれませんが、完全に探偵とかミステリー物ではアウトな領域に片足突っ込んでます。
これはコナンほどの人気作かつ、上手い具合にメインの客層が切り替わったので許されています。他の作品でやったらほぼアウトなことは理解しておいて下さい。
一応言っておくと、筆者は一時期周囲の人に引かれるほどコナン好きでした。もちろん今でも好きです。だから批評目的で言っているわけではありません。ただ製作者目線で考えるとアウトだよね。っていう話なだけです。
アイデア(ストーリー)を膨らませつつ、世界観や設定を考える
現実レベルが決まったので、まずはパターン1のやり方で作業を進めていきます。
このやり方の場合は、わからない点や曖昧な点を明確にしていくと比較的楽です。
- 事故の具体的な内容
- 物が二重に見える疲労度
- 悩んだ期間
- 短距離にした理由
- 主人公や顧問のキャラ設定
- 長距離で開花した理由
他にも色々ありますが、上記の文章から感じるのはこんなところでしょうか。
事故の内容が
幼馴染(女の子)を車から庇った
なら幼馴染の設定を考えて、負い目をあからさまに感じるタイプか、内心に隠すタイプか。ストーリーにどう絡ませるか。よし陸上部のマネージャーにしよう。いや、ここは一緒に陸上頑張らせようとか。考えます。
あとは事故原因がこっちの過失だったら運転手が恨んでないかとか、そういう部分も考えておくのもいいでしょう。
他の項目についても理由や設定を一通り考えつつ、それを元にストーリーのアウトラインやプロットを考えたら、パターン2やパターン3に行く。という流れになることが多いです。(あくまで筆者の場合は)
アイデア(ストーリー)を元に世界観や設定を作る
ある程度ストーリーのアイデアが固まってきたら、一旦ストーリーを考えるのは中断して一気に世界観や設定を考えます。
今回は世界観が現実に近いので、世界観はほぼ考える必要ありません。
地名や登場校、有名人物を架空にするかオマージュするかとかその程度でしょうか。
だからこの場合は、パターン2の中にパターン3を組み込む形で登場人物や舞台の設定固めを頑張ります。
ちなみに一旦中断して行う理由は、設定がふわふわな状態だとストーリーがブレるからです。
具体的なストーリーやプロットを考えようと思うと、ある程度キャラが固まってないと口調や行動パターンが不安定になります。まあ設定を固めたところで本当の意味で安定してくるのは、登場してからしばらく経ってからだったりはします。
ですが、せめて準備段階でしっかり固めておかないと、もっと酷い状態になってしまうことは確実です。
だからある程度纏まった段階で、しっかり考えた方が長い目で見ると楽出来ます。
キャラ設定は長くなるのでまた別記事で解説しますが、舞台は学校なら私立か公立か、とか顧問の他に外部コーチはいるのか。先輩マネージャーを用意すべきか。部員は何人にするか。部の成績はどうか。歴史はどうか。不祥事の有無は。
その辺りの設定を考えましょう。
例えば公立なら、あまり設備が充実していないとか他の部活と練習場所が共有、屋内練習場もない。そんな感じですね。
そういう風に設定を考えるとじゃあ他の部活の人と競うシーンを入れよう、私立校に行って設備の充実具合に驚くシーンを入れるとかそういう感じでストーリーがまた色々と思い浮かんできます。
ただ、もう設定や世界観がある程度決まっているので、レベルの調整がしっかり出来、このストーリーはもっと後に。いや考えたけど世界観や設定に合わないから止めた方が良いな。という判断がキッチリ出来るようになります。
まとめ
- アイデアが足りない場合は、よりアイデアを膨らませる。
- 膨らませたアイデアを分かりやすいようにまとめる。
- アイデアの中からストーリーや世界観・設定のヒントになりそうなワードを抽出する。
- パターン1~3のいずれかまたは全てを使い、世界観や設定を固める(特に現実レベルは絶対)
- 固めた世界観や設定を元にストーリーを考える。
- さらに世界観や設定の細部を詰める。
大まかな手順はこんな感じでしょうか。
もちろんこれは一つのやり方に過ぎません。色んなパターンがあることは重々理解しておいて下さい。
全部書くと長すぎて意味不明になったので、個別に記事を作ります。
今回の記事で流れや大まかな内容はわかったけど、もう少し具体的に知りたい人は今後投稿予定の他の記事も見て下さい。
今回解説が少なかった世界観が現実とは異なる場合の考え方と、世界観や設定から作るパターンについて深堀する予定です。
あともしギャグ的なアイデアの場合は、そこまでキッチリ世界観や設定を決めずに勢いで書いてしまってもかまいません。ただ勢いで書く場合は、5本に1本か10本に1本当たればラッキーくらいな感じです。
次回の記事では、物語の計画書であるアウトラインについて解説します。